「正しさ」は票にならない? リベラル・左派政党が選挙で伸び悩む「一般庶民との断絶」

勝利に繋がらない「理想の高さ」

  • 問題提起: リベラル・左派政党は、ジェンダー平等、格差是正、平和主義といった**崇高な理想や「正しさ」**を掲げるにもかかわらず、近年の選挙で有権者の支持を広げられず、伸び悩む傾向が顕著です。
  • 論旨の明確化: この伸び悩みは、単に戦略や資金の問題ではなく、彼らが追求する**「厳格な風紀と理念」**が、**一般庶民の「日常的な感覚」「文化的な好み」**からあまりにかけ離れていることに根本的な原因があることを論評します。
  • 学術的背景の活用: 前回の記事で分析したインテリ主義運動論理が、いかにして**「選挙戦略上の失敗」**につながっているかを分析します。

「高い理想」が招く有権者とのコミュニケーション不全

リベラル・左派が掲げる批判や理想は、有権者へのメッセージとして機能しないどころか、**「自分とは関係ない、あるいは否定されている」**という疎外感を生んでいます。

  • 庶民の「文化」を否定する「上から目線」
    • ブルデュー的断絶: 批判的知識人層が持つ**「文化資本」**に基づく選好が、世俗文化や大衆の娯楽を「低俗」と見下す態度として有権者に伝わってしまいます。
    • 庶民からすれば、政党は**「生活を良くしてくれる存在」であるべきなのに、「好きなアニメや冗談、生活習慣まで否定してくる説教者**」と映り、政治的共感を得る土壌が失われます。
  • 現実味を欠く「完璧な正しさ」の要求:
    • 選挙において重要なのは、**「今日、明日の生活がどうなるか」という現実的な問題です。しかし、リベラル・左派のメッセージは、しばしば「完璧な反差別」「完璧な環境配慮」**といった、日々の生活を送るのに手一杯の庶民には非現実的な高い倫理基準を要求します。
    • これは、有権者に**「自分たちにはついていけない」という無力感や、「自分を裁こうとしている」**という拒否感を与えます。

**「敵の拡大」**という戦略的ミスの代償

社会運動の論理が持つ**「純粋性の追求」**が、選挙という大衆を味方につけるべき舞台で、支持層を狭めるという自己矛盾を生んでいます。

  • 批判対象の「権力」から「隣人」への転換:
    • 本来、リベラル政党が批判すべきは巨大な資本や国家権力による構造的な不正義でした。しかし、風紀的な厳格さのあまり、批判の矛先が**「不適切な発言をした個人」「古い慣習を守る隣人」など、「日常的な逸脱」へと向けられがちになります(フーコーのミクロな権力**が内面化された結果)。
    • これにより、政党は**「正義の味方」から「日常の監視者」へと見なされ、「社会の大多数」**を敵に回すようなイメージ戦略となってしまいます。
  • 運動内部の純化が外部の孤立を招く:
    • 政党が内部で**「誰が真に正しいリベラルか」を巡って争い、教条主義的な純化を進めることは(前衛党論の負の側面)、外部の幅広い有権者にとっては「排他的で閉鎖的な集団」**と映ります。
    • 選挙は**「最大公約数」を追求するゲームであるにもかかわらず、「最小公倍数」を目指すような運動論理**に囚われることで、支持層が限定的なインテリ層や熱心な活動家に留まってしまいます。

選挙に勝つための「現実的な寛容さ」の欠如

リベラル・左派政党が選挙で結果を出すためには、有権者の不完全さに対する**戦略的な「寛容さ」**を持つことが不可欠です。

  • 「不寛容の寛容」というジレンマ:
    • リベラルの根本思想は寛容ですが、差別や不正義には徹底的な不寛容を貫きます。これは正しい姿勢ですが、選挙戦においては、「多少の偏見や古い価値観を持つ 普通の人々 **」**も取り込まなければなりません。
    • 彼らは、**「間違っている人を正す」のではなく、「今ある不完全な生活を少しでも良くする」というメッセージに共鳴します。有権者の「完璧ではないこと」を受け入れ、その上で政策の利点を語る「戦略的な寛容さ」**が欠けています。
  • 「共感」と「政策」のバランスの崩壊:
    • リベラル・左派は政策論争には強い一方で、庶民の**「共感」を得るための情緒的なメッセージや、「一緒に飯を食える」と思わせるような親近感の醸成が苦手です。これは、彼らの規律正しい禁欲的イメージ**と表裏一体です。
    • 結果として、有権者には**「頭は良いが、冷たく、自分のことをわかってくれない」**という印象を与え、政治不信の受け皿になることができません。

理念とリアリズムの統合

  • 結論: リベラル・左派政党が選挙で伸び悩む最大の原因は、**「正しさの追求」という内向きな論理が、「幅広い有権者の支持獲得」**という外向きな選挙の論理と、根本的に衝突していることにあります。
  • 提言: 選挙で勝利し、社会を変革する力を得るためには、彼らが掲げる崇高な理念と、一般庶民の不完全な日常に対する政治的なリアリズムを統合しなければなりません。彼らは、**「教え導く」立場から「共に歩む」**立場へと、その姿勢を根本的に転換する必要があるのです。
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